こんにちは。有限会社エイミ 取締役SVの中島です。
今回は、重度知的障害児の母として、経営者として、生活介護ライフバランスバンブーハットをどんな考えや想いで運営しているかをお伝えしたいと思います。
私と同じようなお子さんを持つ保護者様や関係者様に読み進めていただけたら幸いです。
私たちは、「楽しい」「もっとやりたい」「つまらない」「疲れた」などの自分の気持ちを相手に伝えるときに、言葉を使いますが、当事業所をご利用されている方は、 言葉でのコミュニケーションに課題のある方がほとんどです。
絵カードなどを用いた視覚的な支援も 行っておりますが、ご本人の体の不調を訴えたり、今感じている「辛い」「疲れた」などの気持ちを訴えたりする スキルはありません。
ご家族の方と面談する機会があると 、重度などの等級に関わらず、 社会貢献や生産性のある活動を通して収入を得てほしい、何か社会的に意義のある活動をしてほしいという気持ちをお伺いすることが多くあります。もちろん、私も一人の親としてそれを望んでおります。
しかし、例えば、工賃を稼ぎたいと思ったとき 、モノ づくり や農作業など何かしら生産性のある活動が必要になります。 ルールの煩雑化やご利用者の方が勝手に移動してしまう可能性のある立ち仕事よりも 、作業をルーティン化でき 、ご利用者の方の所在の把握しやすい安全性の優れている座り作業が多くなってしまいがちになります。 どちらにしても、今までの学校生活とは異なり、運動会や文化祭に向けたイレギュラーなプログラム等が組まれることは少なくなり、単調な日々を送ることが想定されます。
私たちが会社で働くのと同じように、 毎日毎日、同じお仕事をこなしてもらうことになるでしょう。
私たちは、一般的には平日働いて、 休日に映画を見たり、 旅行したり、 カラオケする等、余暇活動を通してリフレッシュしていますし 、一般的に余暇活動は推奨されています。 ですが、生活介護をご利用されている方にとってはどうでしょうか。自分でそれらを選択してリフレッシュすることはできますでしょうか。
少なからず私の息子にはできません。私や家族がその機会を与えてあげなければ何一つ自ら選択することもできないのです。
つまり 、 平日は事業所でのルーティン化された作業に追われ、 休日も本人が望まれるようにはリフレッシュできない危険性があるのです。そうなると 、体の不調をきたしたり 、ストレスをため込んで精神的に不安的になったり 、生きていくうえで最も重要な健康的に過ごすということが難しくなってしまうことも考えられます。
最初にお伝えしましたように、 当事業所をご利用されている方は、言葉で気持ちを訴えるスキルを持っていない方がほとんどなので、より顕著に表れてくるはずです。
さて、 ここ で…
今、 私たちがやるべきことは何か？
・ご家族の方のご要望どおり、働かせてあげたい
・報酬を得る、商品と交換で支払う等、社会の仕組みを身に付けてほしい
・健康的な生活が送れるように 体力づくりをしてほしい
将来、 目指していきたい大きな目標は、たくさんあります。
ただし 、 そのためにはクリアしなければならない課題を見つけて 、一つひとつ着実に進めていく必要があります。
まだ働く機会がなかった方々にとっては、報酬を得る仕組みから覚えていく必要があります。そもそもの仕組みが分からなければ、面白くない活動やつまらない活動はいずれ苦痛に変わってしまう可能性があります。それがきっかけで通所できなくなるケースも良く耳にする話です。
ライフバランス バンブーハットでは、その仕組みを習慣化して身に付けながら 、 体力づくりや働く経験を積み重ねていけるように 、「バンブー通貨」 という制度を導入しました 。
事業所で取り組んだことに対して 、 バンブー通貨を報酬として得て 、余暇活動に 対してバンブー通貨を支払っていくやり取りを日常的に行います。
作業内容は、除草作業やゴミ拾い、リサイクル用としての空き缶つぶし等、 短時間で区切って行えて 、なるべく簡単な動作で行えるものなど、負担の少ないものを行っています。 それを 、１時間かけてやるのではなく 、 例えば、除草作業であれば、５分間の作業を行った後、３分間の休憩を入れて 、を３回繰り返す程度で次の別の活動に切り替えます。わずかな時間、物足りない程度の時間で取り組んでいきます。
なぜならば、時間の長さよりも 、毎回作業に参加できることや、 労働に対してバンブー通貨や「ありがとう 」 の言葉がもらえる経験を増やしたいからです。
「やりたくないと思うまで、やらない」ところからスタートし 、やりたくないことに対しては通貨がもらえて 、やりたいことや欲しいものに対しては通貨を支払うことを繰り返していくことで、 「バンブー通貨が嬉しいもの」となるように、つまり私たちにとっての「お金」と同じ概念が養われるように取り組んでいます。
今はまだわからないお金の概念でも 、５年後、１０年後はどうでしょうか。人は生涯成長するものです。わかるようになっているかもしれませんよね。
生活介護のご利用に期限はありません。学校のように卒業は無いのです。ライフバランスの支援員には、今すぐには結果は出ないかもしれないけど、長い将来を見据えて継続した支援をするよう伝えています。
開所当初からご利用していただいている方の中には、 最初は、仕事をするときに 支払おうとする方もいらっしゃいました 。２年経った今では、間違えることなく 通貨のやり取りができるようになっています。 ご本人がどの程度、仕組みを理解されているのかわからない部分はありますが、 行動として結果が目に見えるように なりました 。確実に成長していると言えるでしょう。
まずは、 次につなげるために、 １回経験していただく。苦痛には感じない活動量で褒め言葉とともに報酬が得られるような環境づくりを行っています。
先にお伝えした通り進めている除草作業では、まだトータルで１ 日１５ 分くらいの積み重ねではありますが、 ちりも積もれば山となるという言葉の通り 、 本社の周辺はライフバランスの皆さんの日々の除草作業でキレイに整備されています。
「働きたい」と思っているかどうかの判断は難しいですが、 こちらの依頼に対して、毎回参加できているという結果を以ってして「働かされている」のではなく「働けている」と思っています。
次なるステップは、目標に向けて通貨を貯めていくこと。近い将来に特別感のあるイベント（やりたいこと）を計画し、そこで通貨をお支払いいただき参加する経験を重ねていきます。またイベントに参加したい！だからまた頑張って通貨を貯めていこう！つまり、私たちにとってのお給料日と同じ意味合いとなるように計画していきます。
このように、バンブー通貨を用い、社会の仕組みを疑似的に行うことで、働くことや将来のために身に着けておきたい行動を増やせるよう取り組んでいます。
除草作業を含め、 １日のプログラムだけ見れば、 大したことはやっていないのかもしれません。 しかし 、よくある困った行動というのは、大抵何もすることがない時間や、活動に飽きている時間に起こることが多いです。
それを踏まえた上で、お仕事、運動、余暇のプログラムの時間帯を変えるなど、毎日毎日変化を持たせながら 、プログラムを組み立てています。 結果と して、当初のアセスメントで想定されていた他害や自傷行為、その他ちょっと困った行動などの問題行動はかなり予防ができている状況です。
現在、 ライフバランスバンブーハットをご利用されている方は、平均年齢が２０ 代前半です。 今は、とにかく体力づくりが必要な時期です。
ウォーキングなども仕事の一環として取り入れ、それを習慣化することで活動量を確保しています。
特別支援学校をご卒業後、 体重が増加する方が多いと聞きます。 それは、学校のように定期的に体を動かす機会が減ることと 、上手くリフレッシュできていないことが原因の一つとしてあるのではないかと思います。
「ライフバランス 」 と当事業所の名前を付けた理由として、 生活も仕事もバランスよく過ごし、 他害や自傷行為、 癇癪などを起こす必要がない環境の中で穏やかな精神状態で幸せに過ごしてほしいという思いが込められています。
今はまだ、 小さな活動を事業所の中で取り組んでいる状況ですが、「辛い」ではなく 、楽しい」時間として活動が習慣になってきているのを実感しています。
いずれ、 お仕事を法人内へ広げたり 、工賃を稼いだりできるようになることを目指しつつ、現在は、その準備段階のトレーニングを日々行っているのです。
私の息子は重度知的障害を伴う自閉症です。自ら健康管理ができない息子やライフバランスの皆様が、肉体的にも精神的にも健康であり続けられ、そして幸せに暮らしつづけられるように、母として経営者として全力を尽くして参ります。
この想いに共感していただける方々と共にこれからも一緒に歩んでいきたいと思っております。
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